眼科手術開業医の会とは?

本会は眼科の先進的医療を担う手術開業医のメンバーが集まり、情報交換と情報発信を行うための臨床医の会です。

21世紀に入って医療はめざましく発展いたしましたが、眼科医療の領域では「先進的な医療は大きな病院が担うべきもの」という概念は必ずしもあてはまりませんでした。大学病院などの基幹病院だけでなく、眼科手術を行う一部の開業医の中にも先進的な医療に取り組んで来たドクターがいました。そして、多くの眼科開業医がオピニオンリーダーとして学会などのフィールドに於いても多数活躍しています。
当会では、会員が当会主催の研究会やメーリングリストを通じた情報の交換を通じて、眼外科医としての技術に磨きをかけ、切磋琢磨しています。また、手術に携わる眼科開業医の立場から、患者様に向けた情報発信を行っております。

第9回「眼科手術開業医の会」主催 セミナー

第9回「眼科手術開業医の会」主催 セミナー

日時:2008年2月1日(金曜日) 午後6時より(日本眼科手術学会開催期間中)
会場:横浜インターコンチネンタルホテル(学会会場に隣接)
  アトランティックにて(会員参加費無料)

「新しい緑内障診断と治療」

演題1  緑内障手術のこれから ─レクトミーは何処へ行く?」
  講師:若葉眼科病院・杏林アイセンター 吉野 啓 先生

演題2 緑内障診療における画像解析の展望 ~診断と治療への有用性」
  講師:北野病院眼科 田辺 晶代 先生

-講演抄録 演題1-

緑内障手術の代表である濾過手術の歴史は古く、その基本概念は既に 150 年前には
存在した。その後、先人達の工夫と改良の下いくつかの大きな転換期を経て、現代の濾過
手術へと繋がるのだが、その基本概念はほとんど変わっていない。150 年前の手術が現代
でも通用すると言えば聞こえは良いが、濾過手術には進歩がないとも解釈できる。現代の
濾過手術と言えばマイトマイシンC併用トラベクレクトミー(以下MMC レクトミー)であるが、
これが臨床の場に登場して早くも 15 年程になる。代謝拮抗剤を 用いて線維芽細胞の増殖
を抑制し、濾過効果の増強、持続 を図るというコンセプトは当時は斬新で、特にMMCはその
優れた眼圧下降効果とともに 術中投与のみという利便性により、 従来緑内障手術をあまり
行っていなかった手術開業医 にも支持され、緑内障手術の裾野の 拡大に大いに貢献したも
のと思われる。

MMCレクトミーは眼圧下降効果に優れ、手術成績の向上に有用ではあったが、一方で高
率に無血管濾過胞が形成され、術後晩期の持続性低眼圧、房水漏出、濾過胞感染などの
危険性が問題視されているのは周知の事実である。低眼圧黄斑症や高度の乱視により
術前に 比して視機能の低下を来たしている症例も多く、現代の Quality of vision(QOV)の
レベルから 見ると極めてお粗末な手術であると言わざるを得ない。

レクトミーは最も基本的な緑内障手術でありながら、術者自身が最も満足していない術式
ではないだろうか?MMC レクトミーが手術成績を飛躍的に向上させたと言いながら、
非穿孔性トラベクレクトミー (NPT)や Viscocanalostomy、Sutrecanalization など多くの
新しい術式が試みられているのはその 証明であろう。

MMC レクトミーは今、ひとつの岐路に立たされている。我々は今後も MMC レクトミーを続け
てよいのだろうか? MMC レクトミーを続けるためには安全性の向上は必須条件であろう。
果たしてそれは可能なの か?あるいはもう MMC レクトミーからは脱却すべきではないのか?
その時は5FU に戻るのか?それとも別の何かを使うのか?それともレクトミー自体から撤退
して別の術式を選択するのか?いくつかの選択肢があるであろう。我々はそろそろその答え
を出すべ き時期にきているようである。本講演では MMC レクトミーの改良を中心に今後の
緑内障手術の進むべき方向を考えてみたい。

-講演抄録 演題2-

緑内障は自覚症状に乏しい疾患であり、視機能異常を自覚し医療機関を受診した際には障
害がかなり進行している症例が少なくない。早期緑内障に比較し、進行期緑内障において
はより強力な眼圧下降が必要とされるが、薬物、手術療法ともに合併症なく十分な眼圧下
降を達成し、有用な視力、視野を生涯保持させることは容易なことではない。よってより
早期に緑内障を発見すること、また進行期緑内障においては障害の進行を的確にとらえ治
療方針を決定していくことが重要となってくる。

従来の緑内障診療では機能変化については視野検査による定量的評価が可能であったが、
構造変化を示す視神経乳頭陥凹、網膜神経線維層欠損については定性的評価が主体であっ
た。しかし、構造学的変化が機能変化に先行する緑内障においては、早期の変化、微細な
変化を捉えるためには構造学的変化を定量的に評価することが欠かせない。また主観には
左右されない客観的な検査が必要である。そのような背景のもとに緑内障分野における画
像解析装置が開発され研究がおこなわれている。

現在の代表的な緑内障画像診断機器は1)Optical Coherence Tomography(OCT3000)2)
Scanning
Laser Polarimetry(GDx VCC) 3)Heiderberg Retina
Tomograph(HRT2)である。それぞれ異なる原理で構造解析が行われるが、全てに共通し
ているのは視神経乳頭変化に先行すると考えられる網膜神経線維層厚解析がおこなわれる
ということである。加えて
OCT では乳頭形状、黄斑部網膜厚の解析、HRT
では乳頭形状の解析が可能である。これらの機器により網膜神経線維層厚の定量的評価が
可能となり、正常眼データーとの比較により異常の有無も判定される。よって画像解析は
緑内障早期診断、網膜神経線維層厚の経時変化の観察に有用であると考えられる。一方
artifact の問題や, 正常眼データーベースはあくまで限られた対象眼から抽出されてい
るために生じる異常判定の絶対性の問題など画像解析には注意を要する部分があることも
事実である。

最近では新たに緑内障診断ソフトを搭載した spectral domain OCT
も開発され、緑内障診断機器の開発はまだまだ続きそうであるが、現在広く使用されてい
る画像解析装置を、緑内障診療にどのように上手に利用していくのかについて具体例をま
じえながら解説したい。

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